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大阪地方裁判所 昭和46年(ワ)5055号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔事実〕<前略> 一 原告は、訴外庄田賀一の有する次の実用新案権(以下、本件実用新案権といい、その対象たる考案を本件実用新案という)につき、昭和四六年九月三〇日専用実施権設定登録を経て専用実施権者となつた者である。

実用新案登録番号 第八七六六三三号

考案の名称 連続固体液体分離装置

出願日 昭和三九年八月一九日

出願公告日 昭和四三年一一月二〇日

登録日 昭和四四年六月三〇日<後略>

〔判決理由〕一 原告が本件実用新案権の専用実施権者であること、本件実用新案の登録請求の範囲が「軸3に緩装した円錐状受片7の支片8の両端を油圧シリンダー10のピストンロッド9に連結し又スパイラル押片4の処々に欠除部を設け、之に噴射管6を突設して成る連続固体液体分離装置」であること、右装置にはスパイラル押片(4)に欠除部が設けられていないし、噴射管(6)も外部から固定筒(1)にその肉厚分だけ挿入されているのみで、固定筒(1)の内側には突出していないこと、被告は別紙<別紙省略>目録記載の連続固体液体分離装置を業として製造し、販売し及び施工していることは、いずれも当事者間に争いがない。

二 右争いのない登録請求の範囲の記載と「考案の詳細な説明」の項及び図面の各記載に照らすと、本件実用新案は

(1) 軸3に緩装した円錐状受片7の支片8の両端を油圧シリンダー10のピストンロッドに連結すること

(2) スパイラル押片4の処々に欠除部を設けること

(3) 右欠除部に噴射管6を突設すること

の三個の要件の一体的結合から構成されている連続固体液体分離装置の構造にあるものと認められる。

三 原告は、連続固体液体分離装置においてスパイラル押片に欠除部を設けることは従来公知の技術であつて、本件実用新案において前記(2)のスパイラル押片4の処々に欠除部を設けることは考案の必須構成要件ではないし、また、登録請求範囲に記載の「之に噴射管を突設し」との事項は、必ずしも固定筒内のスパイラル押片の欠除部に噴射管を突設することのみを意味するものではなく、噴射管を固定筒にその肉厚分だけ挿入したのみで、内部に突出させない構造のものも包含する趣旨であると主張する。

しかしながら、前顕「考案の詳細な説明」の項の記載、とりわけ、「本案は載頭円錐形の固定筒1内にスパイラル押片4を備えた軸3を回動自在に設け、出口に円錐状受片7を対設した連続固体液体分離装置の改良に関す。固定筒1は周壁に多数の孔を備う。」「作用を説明すると処理材料を固定筒1内へ装入し、軸3を回動してスパイラル押片4を介し材料を圧送し材料中に含まれる液分を固定筒1の孔2から排出し連続的に固形分と液分を分離するもので油圧シリンダー10を介し受片7を固定筒1の出口間隔を適当に調節し材料の送出しを加減して能率良く搾液するものである。然るに材料の性質によつて圧送が円滑に進行せず、材料がかたまつて同一場所にたまり、軸が空転することがある。

然るに本案によるとスパイラル押片4の処々に欠除部を設け、噴射管6を突設したので、材料は之により破られ、従来のようにかたまつて停止することがないと共に必要に応じ噴射管6から水を材料塊中へ噴射し、軟化させて移動をよくし、又装置使用後水を固定筒1内へ噴射して内部の掃除を簡易に行い得。」、「以上から明らかな如く……スパイラル押片4の欠除部において固定筒1内へ噴射管6を突設し材料塊の破壊を行い材料の移動を円滑とし、又使用後固定筒1内へ水を噴射して掃除を行ない得る効果がある。」との部分に徴すると、本件実用新案は、截頭円錐形の、周壁に多数の孔を設けた固定筒内にスパイラル押片を備えた軸を回動自在に設け、出口に円錐状受片を対設した連続固体液体分離装置において、スパイラル押片を介し圧送される処理材料が塊状となつて同一場所に停滞することなく、その移動をよくするための考案として、「固定筒内のスパイラル押片の処々に欠除部を設け、之に、すなわち欠除部を設けた箇所に生じる空間に棒状の噴射管を突出させる」ときは、スパイラル押片の回転により固定筒内に圧送される処理材料が性質によつて同一場所にたまる可能性のある場合でも、材料の塊が右棒状噴射管の外壁によつて破られるので、材料中に含まれる液分を固定筒の孔から排出して連続的に固形分と液分を分離することができるとともに、必要に応じ右噴射管内部から水を材料に噴射することにより、材料塊を軟化させて移動をよくすることができるという右二つの機能的作用効果が得られることに想到し、「スパイラル押片4の処々に欠除部を設け、之に噴射管6を突設する」との事項を登録請求の範囲内に記載したものであることが明白である。

そうすると、右「スパイラル押片4の処々に欠除部を設ける」こと自体たとえ公知の技術であるとしても、右の事項が「右欠除部に噴射管6を突設する」との事項と相まつて本件実用新案の必須の構成要件の一つであることはいうまでもないところである。考案構成要件の一部に原告主張の右公知事項を含むということは、なんら右判断を左右するものではない。

そして、右噴射管6とは、固定筒1の内側のスパイラル押片欠除部に、その内壁より更に処理材料を破るに足る程度突出して設けられるものを意味することは、噴射管を突出させる理由、すなわち噴射管が果たすべき既に述べた機能に照らして当然のことである。

四 原告は、被告装置においても、噴射管(6)から水流を強圧で噴射すれば、スパイラル押片(4)間に棒状の水柱が形成され、これによつて処理材料の塊の軟化破壊作用を生じるから、スパイラル押片(4)の処々に欠除部を設け之に噴射管を必ずしも突出させなくても、噴射管を固定筒の肉厚だけ、(すなわち固定筒の内壁まで)挿入した被告装置の構成は、本件実用新案にいう「スパイラル押片(4)の処々に欠除部を設け、之に噴射管(6)を突設する」という構成と技術思想を同一にし、両者は同一視すべきものである旨主張する。

しかし、登録実用新案の技術的範囲は、明細書に開示された作用効果を均しくする技術すべてに及ぶものではなく、登録請求の範囲に記載された事項が示す具体的技術思想に基づいてこれを定めなければならない。被告装置においても固定筒内に噴射管を突設した場合と同程度の水柱を形成するよう固定筒壁の開口部から高圧多量の水を恒常的に噴射するときは、これにより処理材料の塊を破ることができるとしても、右原告の主張は、被告装置の構成自体についてのものではなく、単なる使用方法についての主張に帰すというべく、原告主張の如く被告装置を使用しても、本件実用新案の本来の目的である処理材料からの連続固体液体分離による搾液という効果は殆んど期待することができない。

五 要するに、被告装置は、「スパイラル押片4の処々に欠除部を設け、之に噴射管6を突設する」との本件実用新案の必須構成要件ならびにこれと同一視すべき構成を欠き、登録請求の範囲に記載の具体的技術的思想に基づくものとは到底認められない。したがつて、被告がその装置の製造、販売及び施工等をなす行為が原告の専用実施権を侵害するものであるとの原告の主張は失当である。

六 よつて、原告の本訴請求は理由なしとして棄却……する。

(大江健次郎 近藤浩武 庵前重和)

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